カフェ開業なんて甘い考え?やめたほうがいい?カフェの実態を元カフェオーナーがお話します

カフェカフェ開業

カフェ経営は厳しいよ!

そんな言葉を聞いたことがあるかもしれません。

ただ、そういうことを言う人の大半は、飲食事業の実態を知らないサラリーマンか、飲食店の6割は3年以内につぶれると言う経営コンサルの方たちです。

もちろん、実際に3年以内に6割はつぶれているわけですから、だれでも簡単とは言いません。ですが、ぶっちゃけて言うと、3年以内につぶれるカフェのほとんどは、だいたい同じような失敗要素を抱えています。

そこで今回は、カフェを10年弱、複数店舗経営し、事業売却した元飲食オーナーの視点から、カフェ開業なんて夢の話なのか?難しいのか?をお話します。

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個人レベルの話か法人レベルの話か?

まず、カフェ経営の難しさやカフェ経営が儲かるかという話をするとき、一番大事なのが個人事業主レベルの話をしているのか、法人レベルの話をしているのかです。

法人レベルのカフェ経営は、実際私が経験していますが、かなり難しいです。

なぜかと言うと、人件費や食材費が年々高騰しているうえ、社会保険などの支払いも個人事業主とは違い義務になるため、個人とは最低限上げなければならない売上の規模がまったく変わるからです。

法人

たとえば、仮に月商100万円でアルバイトを1人雇っている計算だとしても、個人と法人では手残りの額が全く変わってきます。法人は、常時お店にいてくれる店長も雇わないといけないわけですから。

カフェ経営の難しさを話すときに、意外とこのあたりの話をしない方が多いですが、今回のお話はカフェ開業を目指す方向けなので「個人事業主」のお話であると最初にお断りしておきます。

カフェは黒字にするだけなら簡単

さて、「個人事業主のカフェ経営と考えた場合、カフェ開業は難しいか?」ですが、“黒字にするだけ”であれば、ハッキリ言って簡単です。他の飲食よりも簡単だと思います。

もし、赤字になるとしたら以下のようなケース。

  • 立地のわりに固定費が高すぎる
  • 売上のわりに人件費やリースなどランニングコストが高すぎる
  • コーヒーの味や食事などソフト面にしか関心がなく、ハードに関心がない
  • 接客が極端に不愛想、もしくは雑
  • 年齢や時間を理由に、仕込みにかける時間やサイドメニューを削る
  • 提供しているものがすべて家庭料理の域を超えない
  • 見るからに内装にお金がかかっていない
  • SNSなど最低限の集客すらしていない

正直、これ以外に思いつきません。

特に、盲点なのはランニングコストのかけ方でしょうか。たとえば最近はエアコン、冷蔵庫、エスプレッソマシンなどなんでもリースしてくれるようになりました。

「初期投資が低くなって開業しやすくなった!」と勘違いする方もいらっしゃいますが、基本的に、カフェの売り上げ規模でリースを増やすのはメリットよりリスクの方が大きいことは知っておいたほうがいいでしょう。

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赤字になるケースで一番多いのは?

私が知っているなかで個人で赤字になるケースとして一番多いのは、最後の「最低限の集客を怠っているケース」です。

SNSで集客

意外に思われるかもしれませんが、最近は昔よりカフェ・喫茶店の出すメニューのクオリティは平均的に上がっています。

べつに意識が高くなったからとかではなく、単純に業務用製品のクオリティがアップしたり、カフェ経営に関する情報があふれているからです。

少しユニークなものを作りたいと思ったら、レシピなんてゴロゴロ転がっていますしね。

カフェにお客さんが来ないとき、たいていの方が「〇〇のメニューを改善して、もっと来てもらおう」「原価率の高いメニューを下げなきゃ…」と言いますが、そもそもお客さんが来ていないのだから、やるべきことは集客以外ありません

たとえば、SNSのフォロワーが1万人いて、1年や2年で赤字閉店になるカフェはよどレアでしょう。

素人がいきなり1万は難しいにしても、1,000人ぐらいならオープン前から目指すことはできます。まずは、オープン前にしっかり集客力をつけることが大事です。

カフェのWEB集客に使える無料サイトやアプリは、下記の記事にまとめましたので、集客に関心がある方はご覧ください。

カフェの集客に絶対やっておくべき無料アプリ&WEBサイト8選!
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また、集客に関しては、私の拙著もございますので、そちらもよかったらご覧ください。

〇〇十万円の粗利がボーダーライン

ただ、こういうケースを除けば、個人のカフェは赤字にする方が難しいのです。

なぜなら、カフェは経費が少ないから。

コーヒーだって腐るものではありませんし、フードだってサンドイッチか焼き菓子メインのところがほとんどでしょう。カレーやスパゲティ、ケーキなどを出すと、とたんに原価が上がりますが、それだって客入りを見込んで仕込むため、そこまで原価を圧迫するものではありません。

コーヒー

「黒字にするだけ」なら、カフェ・喫茶店は簡単な業種と言えます。

ただし、月の粗利20万を超えようとおもうと、カフェ経営のハードルは急に上がります。

原価率20%、家賃15万円、水道光熱費5万円、その他諸経費のカフェを1人オーナーでやるとしたら、月20万円の粗利を超えるのに月商が60万円必要になります。25日営業だとしたら日商2.4万円です。

コーヒー1杯500円で言えば、48杯。

小さな喫茶店なら3回転はしています。べらぼうに忙しいです。カフェは単価が低いので、このあたりがアルバイトを雇わず、1人でやる限界の売り上げと粗利ぐらいです。
※実際にはサイドメニューもあるでしょうが、あくまで簡単な計算として

これ以上を目指すとなると、スイーツやフードの仕込み、レジ会計などにアルバイトが必要になってくるため、いきなり必要な月商のラインが90~100万円前後になってきます。

こうなると、ランニングコストが急増します。つまり、このラインの月商を目指すと、カフェでも赤字閉店もありえます。

あなたはカフェ開業をして毎月いくらほしいですか?

それ次第で、カフェ経営は甘いか?難しいか?への質問の回答が変わってくるのです。

恵まれた条件が多いほど成功しやすい

さて、では月の粗利20万円をボーダーラインとして、カフェ経営を成功させるための一番のポイントですが、それはあなたがどれぐらい恵まれているか?です。

ふわっとした言い方なので、もう少し具体的な例を挙げます。

  • 持ち物件で家賃がゼロ、しかも街はずれや山奥などではない
  • 賃貸物件だが、目の前の人通りのわりに家賃がかなり安い
  • 年齢が若く、身ぎれいにしている[美人/イケメンなどの話ではない]
  • 店舗を無償で支えてくれるパートナーがいる
  • SNSですでに多くのフォロワーを抱えている
  • 調理技術が家庭料理レベルではなく、とびぬけている
  • イベントにも顔を出すなど行動力が他人と比べてずば抜けている
  • カフェ開業にかけられる資金が他人より多い
  • 友人が多いなど、多くの人に好かれる性格をしている

じっくり考えてみましたが、このあたりでしょうか。このなかで最低でも2つ以上をクリアしていて、カフェ経営を失敗する例はあまり見たことがありません。

カフェ経営の話をするとき、あまり年齢のことを言う方はいらっしゃいませんが、若いというのはそれだけでメリット。年齢が30代以上でカフェ開業をするなら、エプロンをしたり、シャツを着たりと、とにかく清潔感のある服装をすることが大事です。

若い店員

ただ、このなかでも注意が必要なのが下記の2点

「店舗を無償で支えてくれるパートナーがいる」

「SNSですでに多くのフォロワーを抱えている」

です。

店舗を無償で支えてくれるパートナーの存在

よく、夫婦で、あるいは親子でカフェ開業をするので、アルバイトのように賃金がいらないから、売り上げはそこまで立てなくても大丈夫なんです!という方がいらっしゃいます。

一面では事実で、人件費が削れれば、売上に対する粗利は確かに増えます。

ただし、この場合重要なのは、きちんと「2人で売上を立てる計画を作る」ことです。

たとえば、カフェでアルバイトを雇うとき、なぜアルバイトを雇うかと言えば、レジ会計や配膳、ドリンク作りなど、オーナーにできない仕事をやってもらうためです。

逆に言えば、その間、オーナーは料理作りやスイーツ作りなど、別のことで売上を立てる作業をやっていなければいけません。

夫婦でカフェ経営

話で聞くと当たり前のように聞こえますが、このケースは多々あります。

「お母さんが店頭に立って、お子さんが裏で調理やコーヒーを淹れている」喫茶店はたくさん見てきましたが、その多くがつぶれてきました

なぜなら、カフェをやりたくて、情熱があるのはお子さんのほうで、本来はそういう人がお客さんと会話をしてリピート率を高めないといけないのに、ただの水配りとオーダー聞きのためにお母さんが表に出ているからです。

こうなると、とたんにカフェの魅力は半減します。

それなら水配りやレジはセルフにするとか、愛想の良い若いバイトの子を入れたほうが粗利も売り上げもアップするでしょう。パートナーとカフェ経営するのがメリットになるのは「人件費を削れるから」ではなく、「お互いに得意なことで売上を作れるから」だと意識しておきましょう。

SNSのフォロワーだけが多くても…

最近多いのがこのケースで、SNSのフォロワー1万人を超えているインフルエンサーが立ち上げたはいいものの、コンテンツのクオリティが低すぎてリピートにつながらないカフェもよく見てきました。

これに関しては、最初の数カ月はSNSのフォロワーが来てシェアをしてくれるので、問題が表面化しづらいのが特徴です。

SNSのフォロワーはあくまで一見様。ですが、リクルートの調査によると、一般的な飲食店のリピーターの割合は77.5%だとされています。
参考:https://www.recruit.co.jp/newsroom/recruit-lifestyle/uploads/2018/09/RecruitLifestyle_ggs_re20180925.pdf

SNSのフォロワーが多いお店は、もう少し新規の割合が増えると思いますが、いずれにせよ、リピーターを増やすことは大事。新規の集客力があるからこそ、リピーター作りも頑張りましょう。

ただ、そういった例外はあるにせよ、基本的にフォロワーの多いお店が成功しやすいのは間違いありません。

最初にしっかりお金をかけておくこと

最後に、失敗しづらいカフェ開業の最大のポイントは「できる限りカフェ開業にお金をかけておくこと」です。

これは業界でも半ば常識化していますが、たとえば1,000万円をかけてつくったカフェは、元手200~300万円でつくったカフェに比べると、つぶれにくいです。

理由はいろいろありますが、お金をかければ内装や外装がきれいになります。すると、それだけでお店の入店率が上がりますし、SNSでシェアもしてもらいやすくなります。

カフェにお金をかける=顧客満足度が上がる、集客につながる、リピーターが増える

と、様々なメリットがあるのです。

「お金があるなら最初からお金をかけてるよ!」と思われるかもしれませんが、それは自己資金の話。こういった方は、カフェ開業のときに融資を受ける想定をしていません

融資

カフェは他の飲食店に比べて低資金で開業できると言われます。

一方で、だからこそお金をかけたカフェは、それだけで他店との差別化になるのです。

確かに、融資は受けたことがなければ怖いものかもしれません。「赤字が出て、閉店するときに借金を背負っていくのか…」と不安に思われるでしょう。

ただ、私もそうですが、融資を受けてきちんと内装を作っておくと、それを事業譲渡や売却したりするのも簡単です。実際、私が過去に作ったカフェで1か月以上売却に時間がかかったカフェはひとつもありません。

カフェにお金をかけるのは、一度使ってしまえば終わりの消耗品などとは違い、投資です。将来、カフェを失敗したとしても、売り抜けることも簡単になります。

手元の貯金だけでカフェ開業を検討している方は、今一度カフェ開業にお金をかける意味を考えてみてもよいかもしれません。

つまり、カフェ開業は難しい?

それでは結論として、個人事業主のカフェ開業は難しいのでしょうか?

一言でいうなら

アルバイト程度の収益を出すなら簡単だが、正社員ぐらいの稼ぎが必要なら難しい

です。

ただ、アルバイト程度の稼ぎを出すにしても、最低限の集客やサービス、クオリティの提供を怠っている人は例外。これはカフェが難しいとかではなく、経営者である自覚が足りないだけです。

正社員程度の稼ぎを出すとなると、融資などで資金をしっかりかけて、内装や外装、看板などのハード面の対策と、提供する商品の品質を上げるなどのソフト面の対策とのそれぞれが必要になります。

これらをきちんと考えられる人であれば、カフェで成功する!…という保証はしかねるものの、よほど酷い失敗をすることはないでしょう。

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